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第二章 箱庭の暮らし

4 獣人の名前

二人は互いの身の上を話す。

獣人は獅子族の男。高等教育機関を卒業後、7年程度社会人として建築設計士として働いていた。

基本的には温厚な性格で、見た目とは裏腹に争いを好まない。

ただし仕事に関しては非常に真面目。話しぶりからも、ずいぶん熱心に仕事に向き合い打ち込んでいたのだとわかる。技術者として知見を深める継続努力を惜しまない姿勢が伺えた。

つい、現代の日本で目にする四足歩行の肉食獣を連想してしまう。

「そんなごつい手で設計士やってたのか?怖がられたりしないのか?」

こちらの脳裏に浮かぶ動物園で見た猛獣とは異なる生命体とわかっていはいても、デスクワークをしている様子は連想出来なかった。彼はこちらの質問の意図に小首を傾げながら、失礼な質問だったのにも関わらず平静な様子で答えてくれる。

「俺の世界では普通だ」

主人公の身の上を話しても、自身の専門性は棚に上げて主人公のこれまでの販売員としての実績や経験を頷きながら聞き、目を見て肯定してくれた。

甲子園に出られなかったことも、

「非常に重要な試合に出られなかったのは残念だが、かけた熱意は自分の血肉に残る」

低くて深みのある落ち着いた声で励ましてくれた。

最初は牙を見るだけで怖かった。

しかし話してみると、意外なほど常識人だった。イカツイけどめっちゃ良い奴、という認識に至るのに時間はかからなかった。

むしろ突然異世界へ連れてこられたことに怒っているのは主人公より彼の方だった。

二人は元の世界へ帰るため、仕方なく「娯楽」を探すことにする。

5 娯楽がない世界

最初に訪れた集落では、二人は歓迎される。幸いにも新しい開墾地に建てたばかりの空き家を宛がってもらえることになった。

箱庭の住人たちは二人を神の使者だと認識しているらしく、もてなしは手厚い。自由に集落を歩き回る許可を得て、しばらく過ごしてみてすぐに違和感を覚える。

子供たちが遊んでいない。

歌もない。

踊りもない。

酒場のような場所もない。

祭りもない。

食事も必要最低限。

日の出とともに畑へ行き、仕事をする。

夕方になると集落へ戻る。

家族や同じ仕事仲間と食事をする。

日が暮れれば眠る。

それを繰り返す。

主人公は子供に、

「学校は?」

と聞くが、「学校は好きじゃない、勉強しても意味ないし」と顔をしかめて口をへの字にして言う。

「じゃあ、休みの日は何してるんだ?」

「休み?大人の手伝いだよ!やることはいっぱいあるんだ」

学ぶことはある。だが、遊びの時間という概念がない。

そもそも「何もしない」という発想がない。

主人公は衝撃を受ける。